アウティングの悲劇を防ぐために 〜一橋学生転落死事件に思うこと〜
【LGBTニュースを正しく読み解く】

リオオリンピックは選手のカミングアウトが過去最多!

こんにちは! ライターのhanaです。皆様お元気ですか?

先日、リオオリンピックが閉会式を迎えましたね! 今回のオリンピックは、同性愛者であることをカミングアウトしている選手の数が過去最多の42人ということで、大きく話題になりました(※48人と報道しているメディアもあります)。前回のロンドンオリンピックの23人と比べると大幅に増えていることがわかりますよね。

gatag-00013610(画像元:Vector Open Stock)

レズビアンの選手としては、会場で同性パートナーからのプロポーズを受けたイザドラ・セルーロ選手(ラグビー・ブラジル代表)、「勝利を家族、コーチ、愛する人(女性パートナー)に捧げる」と語ったラケーレ・ブルーニ選手(水泳・イタリア代表)、今回初めて公式にカミングアウトしたラファエラ・シルバ選手(柔道・ブラジル代表)、その他たくさんの選手が話題となりました。

 

「IRORIO 選手のカミングアウトは過去最多!歴代で最もLGBTに寛容なリオ五輪」(参照日:2016年8月31日)

http://irorio.jp/jpn_manatee/20160817/344142/

 

同性愛者に対する理解の度合いは国によってさまざま。同性婚が認められている国もあれば、同性愛者が死刑の対象となる国もあります。こうした状況の中で、世界的に活躍するスポーツ選手が自らの意思でカミングアウトをしたーーこの嬉しいニュースに勇気づけられた人も多いのではないでしょうか。

 

「カミングアウト」と「アウティング」

カミングアウトで最も重要なのは「本人の意思で、本人の望む時期・方法で行われる」ということ。本人が望んでいないにもかかわらずカミングアウトを強要することはできないし、ましてや周囲の人が勝手に公表してしまうことなど絶対にあってはなりません。

本人が自らの意思でジェンダー・セクシュアリティを表明することを「カミングアウト」と呼ぶのに対し、本人の意思に反してジェンダーやセクシュアリティが公表されてしまうことを「アウティング」といいます。
 
アウティングはその人の人生を大きく変えてしまうほどの影響力があるにも関わらず、その危険さを理解していない人は多いのかもしれません。今回取り上げるのは、一橋大学のロースクールで、アウティングによって当人の死を招いてしまった悲しい事件です。

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なぜ「彼の死」を防げなかったのか

まず事件の概要を説明します。

【一橋大学ロースクールの学生であるA君は、2015年4月、同級生の男子学生にB君に、恋愛感情を抱いていることを告白。B君は、付き合うことはできないが友達でいたい旨を伝えた。同年6月、B君は同級生複数名でつくっているLINEのグループで、A君が同性愛者であることを暴露。A君は心身に不調をきたし心療内科に通院するも、8月にパニック発作を起こし、校舎の6階から転落死した。】

この事件を知った時、私は辛くてたまりませんでした。なぜこのような事件が起こってしまったのだろう、なぜ死を防げなかったんだろう、最悪の事態に至るまでに何かできることはなかったのだろうか……。なぜ、B君をはじめ、A君の周りの友達は、A君のカミングアウトの葛藤やアウティングの苦痛を想像できなかったのか。悲しさとともに、多くの疑問がこみ上げてきました。

 

アウティングの経験

今回の事件を知ってから、私も自分の学生時代を思い返していました。私自身は大学の友人にはほとんどカミングアウトしていなかったこともあり、アウティングの被害に遭うことはありませんでした。
 
しかし、大学で同じサークルに所属していた男子学生がアウティングされるのを聞く立場になってしまったことがあります。サークルのある先輩が他愛ない会話の中で突然、同じサークル内の男子学生に関して「あいつさあ……バイなんだって。でも(その話題には)あんまり触れないであげて。」と私に告げてきたのです。

その口調から、先輩はこれまでに他の学生にもその秘密を漏らしてしまっているということが想像できました。それも本人がいないところで。男子学生自身が気づかないまま、サークル内の多くの人が彼のセクシュアリティを知っているという状況が生まれてしまったのです。

もしも本人がこのアウティングの状況を知ってしまったらどのような気持ちになるでしょうか。それは彼自身にしかわかりませんが、大きな精神的苦痛を与えてしまう可能性もあるのです。アウティングをしてしまった先輩は、彼自身の気持ちを想像することができないまま、「秘密を知っているという優越感に浸りたい」という気持ちだけでこのような行動に出てしまったのだと思います。

 

相手の気持ちを想像すること

先輩に欠けていたのは、カミングアウトの葛藤やアウティングの苦痛を想像する力です。そして今回取り上げた一橋大学の事件も、A君の葛藤や苦痛をB君が想像できなかったために起こってしまったのではないかと思います。
 
私には、B君がA君の死を望んでいたとは考えられません。アウティングを擁護する訳では全くありませんが、B君は、自分のしたことが相手の死を招くとは思っていなかった、自分だけが知っている秘密を抱えきれなくなった結果、LINEグループでA君のセクシュアリティを公表してしまったのではないでしょうか。
 
もちろんこれは、あくまでも私の想像です。でも、もしそうであれば、今後このような事件を起こさないためには、カミングアウトの葛藤やアウティングの苦痛を、世の中の人に知ってもらうしかないのです。

 

カミングアウトの勇気と葛藤

冒頭で取り上げたように、スポーツ選手をはじめとする著名人のカミングアウトは、華やかなニュースとして報道されます。明るい話題として取り上げるのは望ましいことですが、その反面、カミングアウトに至るまでの葛藤や、カミングアウトするのにどれだけ勇気が必要だったのか、カミングアウト後に彼らが日常的にさらされている差別や偏見は見えにくくなってしまいます。私は、そのカミングアウトの裏にある苦しみや勇気も伝えていかなければならないと思っています。

 

私自身は家族と少数の友人にはカミングアウトしていますが、そこに至るまでには様々な葛藤がありました。特に両親に話すときには「気持ち悪い、おかしいと思われたらどうしよう」「一時の気の迷いだと思われたらどうしよう」と悪い結果ばかり想像してしまい、なかなか勇気が出ませんでした。しかし自分が自分らしくいるためにどうしても話したいと思い、どのように話せば両親を困惑させずに済むかを一生懸命に考えました。

私の場合は、普段テレビを見ながら、ゲイのタレントが出ているバラエティやLGBTに関するニュースが流れた時にはさりげなく話題に取り入れて両親の反応を伺いました。そして両親が偏見を持っていないことを確認し、長い時間をかけて、一番良いカミングアウトの方法を探りました。

両親の性格上、日常の会話の中でさりげなく話す方が良いと思ったので、「私はレズビアンだ」と告げるのではなく、「女の子と付き合っていて、夏に旅行に行くんだ」と話し、そのまま旅行先の話に移りました。父も母も少し驚いていましたが、特に深く追求することなく、そのまま自然に受け入れてくれて、ほっとしたのを覚えています。両親に話せたことは私にとってとても大きな出来事で、一つ心の重荷が取れたように感じました。

 

私の両親はこのような形で受け入れてくれましたが、セクシュアルマイノリティを取り巻く状況は様々で、カミングアウトをするのが難しい場合もあります。私がセクシュアルマイノリティの方々に伝えたいのは、何よりも自分を大切にして、自分が傷つかない道を選んで欲しいということ。それを第一に考えた上で、もし可能であれば、カミングアウトの葛藤やアウティングの苦痛を含め、自分自身の体験談を伝えていって欲しいなと思います。

 

悲しい事件を二度と起こさないために

一橋学生の転落死事件は、私にとって、そして多くの人にとって、他人事として済ませることができない、とても悲しい事件でした。このような事件を二度と起こさないために、個人レベルでできることは何か、一緒に考えてみませんか。gahag-0118805601今回もお読みいただきありがとうございます! LGBTニュースで取り上げて欲しいものがあれば、ぜひコメント欄で教えていただきたいです。また次回もよろしくお願いします!

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